株式投資を始める前に、まず最初に知るべきは「株価とは何か?」です。
株価に定価はありません。株価とは、企業の価値を時価で表したものであり、需給バランスによって日々刻々と変動するのです。
では、この企業の価値はどのように決まるのでしょうか?
先ほど株価に定価はないと言いましたが、企業の価値には値段が存在します。今はまだ覚えなくて結構ですが、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)という指標を聞いたことはないでしょうか?
この指標は、純資産や純利益から企業の価値を求めるものですが、例えば下記のような会社があったとします。
さんしろう商事
設立5年で赤字決算なし、無借金経営
- 資本金は1000万円
- 純資産は5億円
- 今期の純利益は10億円
この会社の企業価値はいくらでしょうか?決算書をお見せできないのが残念です(笑)
設立当初なら実績もないので1000万以上の価値はありません。要は何を基準に企業の価値を見出すかによって変わるわけです。
あくまで需給バランスによって株価は決定するので、求める企業の価値も人それぞれ違うのです。
こんな良い会社(笑)でも、世界中の人に見向きもされなければ市場価値はゼロに近いでしょう。株価って難しいですね。
気を取り直して説明していきましょう。本記事では、簡潔・明瞭をモットーに以下についてまとめています。
本記事の内容
- 株価について学ぶ
- 株の投資スタンスについて
- 株投資のメリットについて
- 株投資のデメリットについて
「株式投資は美人投票」
著名なイギリスの経済学者、ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)の言葉です。
「100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票してもらい、最も投票が多かった人に投票した人達に賞品を与える新聞投票」を株式投資に見立てました。
要は、自分が美人だと思う人に投票するのではなく、多くの人が美人だと思う人に投票すれば賞品が貰えると例えたわけです。
株価は人気(需要)に左右されるものです。相場の格言に「銘柄に惚れるな」とありますが、あなたが惚れた人(銘柄)が、誰もが思う美人ではないのです。
言い得て妙ですが正しいようで間違ってもいます。先ほど株価は需給バランスで決まると述べましたが、決して人数のみで決まるほど単純ではないからです。
その点も併せて解説していきます。それでは、本文へどうぞ!
株価が変動する理由
株価は企業の価値を時価で表し、価格は常に変化しています。
市場取引は、買い手と売り手が存在して初めて成り立つものであり、価値を決定付ける要因は「重要と供給のバランス」です。
買いたい人が多ければ株価は上がり、売りたい人が多ければ株価は下がるのです。
実生活においても、需要が多い(人気)商品は高く売れますが、人気の無い商品は供給過多で価格も下がるのが市場原理です。
「買いたい人が多ければ~」と述べましたが、厳密には需要と供給のバランスは「人数ではなく数量」によって左右されます。
例えば「1株だけ100円で買いたい人」が10人いても、「20株を90円で売りたい」人が1人いるだけで株価は下がるのが道理です。
このように、売り手と買い手の思惑が一致して、値段の折り合いが付けば取引が成立し株価が形成されます。
重要なのは「なぜ買いたいのか?売りたいのか?」であり、市場心理は情勢の変化や企業業績等で刻々と変化します。
近年の転売ヤー(転売屋)を例に見れば分かりやすいでしょう。コロナ騒動での高額マスク販売は記憶に新しいところです。
ジェットコースター相場
ジェットコースター相場と言う言葉を聞いた事はないでしょうか?
いちいち説明する必要はないでしょうが、ジェットコースターとは遊園地に設置されている遊具で、急勾配などを高速で駆け抜ける絶叫マシンとも呼ばれる乗り物です。
株価は刻々と変化する生き物であり、前日終値が100円で当日終値も100円であれば、一見変化無いように見えますが、1日の流れで見ると大幅に変化している場合があります。
ジェットコースター相場では様々な思惑が交錯し、急騰・急落と乱高下します。
2007年のサブプライムローンに端に発した金融危機では、相場全体がジェットコースター相場という様相も呈しました。
冷静になって考えよう
これには個々の意識を凌駕する圧倒的な群集心理が働いていると考えられ、冷静に物事を判断する事が難しくなっているのです。
先人が残した株の格言に「休むも相場」とあります。株とは心理戦であり、冷静に相場を見つめ直す事が、株式相場を生き抜く秘訣ではないでしょうか。
株の投資スタンスをきめる
株の投資スタンスとは、直訳すれば「投資の姿勢」、即ちどのような考え方・手法で株式投資に臨むかと言う事です。
一般的には、長期投資か短期投資かの投資期間を表す場合に使われます。
あなた自身の投資環境や性格などを考慮して、投資期間を最初に決定する事で、株に対する基礎的な考え方を構築し、効率的な資産運用を行う事が出来るのです。
定義はありませんが、一般的に1日~数日程度で行う投資を「短期投資」、数ヶ月のサイクルで行う投資を「中期投資」、1年~数年に及ぶ投資を「長期投資」と言います。
まずは何の為に投資するのか?動機を考える事が、投資スタンスを確立する第一歩です。
投資スタンスを選ぶポイント
選ぶ投資スタンスによって、適した銘柄も取引に挑む姿勢も異なってきます。
長期投資の場合は、株主優待や配当(インカムゲイン)を得やすく、「株価が割安である」「将来の成長が期待できる」といった、応援する企業がある場合に適してます。
長いスパンで良い銘柄を選べば、売却益(キャピタルゲイン)も大きく期待出来るでしょう。
短期投資の場合は単純に売却益狙いです。
業績や成長性といったもものは関係なく、値動きの中でタイミングを見計らい利幅を稼ぐ方法で、1日に何回も取引を繰り返す人も少なくありません。
短期投資は売買のタイミングが非常に重要であり、集中力がかなり要求される投資スタンスと言えます。常に株価が見れない人には向かないでしょう。
投資スタンスで銘柄を選ぶポイントは、短期投資、中期投資、長期投資、それぞれの投資期間に適した銘柄は何かを考えることです。
短期投資のポイント
短期投資では、売買を1日~数日間のサイクルで行いますので、値動きの激しい銘柄を選ぶのが望ましいでしょう。
具体的には、「業務提携や買収」「株式分割」「業績の上方修正・下方修正」といった材料のある銘柄です。
但し、値動きの中で売買する短期投資は、タイミングの見極めが非常に大切です。かなりの集中力と決断力が求められる投資スタンスと言えます。
中期投資のポイント
中期投資では、数ヶ月のサイクルで売買を行いますので、中期投資を行う際の基準は、業績の明るい会社です。
「来期の見通しが良い」「上方修正の余地がある」など、業績によって株価が上昇する可能性がある銘柄が望ましいでしょう。
長期投資のポイント
長期投資は、売買サイクルを1年~数年程度、或いは安定的な長期保有を目的とした投資スタンスです。選ぶ基準は、値動きが揺るやかに上昇する銘柄が良いでしょう。
業績の良さに加え、企業の取り組む研究等が将来的に有望である、その企業の株主優待に興味があるなど、投資本来の目的である「企業に対する純投資」を行うのがベストな選択です。
自分に合った投資スタンスを選ぼう
投資スタンスは、投資目的やあなたの性格、投資環境に左右されるものです。
短期投資がしたいのであれば、平日、株価の動きを常にチェック出来る環境が望ましく、日中働くサラリーマンなどには不向きと言えます。
また、株主優待・配当の獲得や応援する企業がある場合などは、じっくり取り組む事が出来る長期投資が望ましいでしょう。
重要なのは自分に見合った無理のない投資スタンスを選ぶ事です。
自分はどの投資スタンスに当て嵌まるのか、ライフスタイルと照らし合わせながら冷静に考えて取引に挑みましょう。
オススメは長期投資
投資する目的やライフスタイルに合せて、どの投資スタンスを選ぶかは人それぞれですが、どの投資スタンスを選んでも、メリット・デメリットは存在します。
株初心者であれば、短期投資はリスクを考えるとあまりオススメ出来ません。それよりも、投資の計画が立てやすい長期投資で経験を積む方が良いでしょう。
短期投資と比べ、選ぶ銘柄の値動きが緩やかなので、リスクが減る分リターンも少ないのがデメリットと言えますが、短期的な変動で取引しないので、銘柄選択をしっかりとすれば勝てる確立も上がります。
また、長期的視野で成長株投資を行い、10倍株(テンバガー)のような有望な銘柄を見つける事が出来れば、短期投資を凌ぐ利益を得ることも可能です。
但し、値動きが揺るやかな事に安心して株価のチェックを怠ると、気がつけば下がっていたという事も十分考えられます。
長期だからと放置するのではなく、例え長期であろうと数日に一度は株価の動きを確認して、「このペースでいけば株価が幾らになったら売ると良いだろう」など、適宜計画の練り直しも必要になるでしょう。
株投資のメリット
株投資の最大の魅力は、リスクはあれど銀行預金とは比べ物にならない大きな利益が得られる点でしょう。
バブル崩壊後の長引く経済状況の中、デフレ経済からの早期脱却を目指し「ゼロ金利政策」「量的緩和政策」等の金融政策が取られてきました。
2020年12月時点で、大手銀行の定期預金で0.002%程度の利息しかなく資産運用としての魅力はありません。
株投資で得られる利益には、株価の値上りによる「値上がり益(キャピタルゲイン)」、株主の権利である企業収益の分配金「配当(インカムゲイン)」、自社製品や割引券、サービス等を提供する「株主優待」などがあります。
株価の変動で上下しますが、配当利回りが5%を超える企業も珍しくありません。
もちろん、元本が保証されないリスクはありますが、元本が何倍にもなる可能性を秘めた資産運用法はそうそうありません。
株投資は、リクスを許容できる人には魅力的な金融商品と言えるでしょう。
驚異の大バケ株
株投資の魅力に「値上がり益(キャピタルゲイン)」を挙げましたが、過去には驚異の変貌を遂げる大バケ株がありました。
一番の大バケ株は、インターネットの普及と共に急成長したヤフー(現社名:Zホールディングス4689)です。1997年11月に店頭公開した同社の公募価格は70万円、初値は200万円のスタートでした。
その後、1株→2株の株式分割を13回、2013年には1株→100株の株式分割を行い、当初から持ち続けていたら1株が819,200株にまで増えた事になります。
本記事執筆中の2020年12月24日時点の終値は608.9円。初値200万から計算すると、なんと約249倍の4億9881万円です。
10倍株(テンバガー)は珍しくない
ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)も、東証2部上場時の初値から計算すると、2020年12月24日時点の終値で約143倍弱となっています。
パズドラで有名なガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)や、パーソナル・トレーニングジム運営のRIZAPグループ(2928)なども最高値で100倍超になった銘柄です。
流石に100倍超になる銘柄は稀ですが、流行に乗って急成長し短期間で5倍、10倍となる銘柄も少なくありません。
過去の大バケ株を参考に、日々の日常生活の中で流行の兆しを感じとり、未来の大バケ株を見つけ出す楽しみも株式投資の魅力の一つではないでしょうか。
IPOで一攫千金?
IPOとは「Initial Public Offering」の略で、未上場企業が証券取引所に新規に上場して、一般の投資家に株式を公開することを言います。
企業にとってIPOは、銀行融資(間接金融)中心の資金調達手段から、資本市場を通じた資金調達(直接金融)が可能になることで、自己資本の充実による財務体質の強化を図れるメリットがあります。
また、メディア等への露出が増えることで知名度も上がり、厳しい上場審査基準をクリアしたことで得られる優良企業のステータスは社会的信用力を高め、結果として取引先の拡大や優秀な人材の確保にも繋がります。
投資家にとってIPO株の魅力は、公募価格は割安に設定される場合も多く、初値は類似企業や会社の成長性を考慮して形成されるので、初値が公募価格を上回るケースが多いことです。
人気が高まっている時期の初値騰落率は軒並み100%(公募価格の2倍)を超えるのも珍しくありません。
年間平均で公募価格の2.6倍の年もある
2005年を例に見ると、株式市場が活況を呈したことから新規上場社数158社の中で値下りした銘柄は僅か3社、変わらず4社で、151社が公募価格を上回っており、平均騰落率は161.13%(公募価格の2.6倍)となる活況ぶりでした。
IPO人気が高い時期では、IPO株を購入すれば必ず儲かると言った状況で、購入申込が殺到し抽選倍率が数百倍を超えるケースも珍しくありません。
ITバブルで沸いた2000年前後もIPO人気は凄まじく、1999年10月に上場したエムティーアイ(9438)は、公募価格330万円に対して初値3,000万円と、初値騰落率は809%(公募価格の9.09倍)を記録しています。
ITバブルの崩壊と共に一旦は沈静化しましたが、その後復活したIPO人気は「新興バブル」を生み出しました。
2004年~2006年の3年間は、年間の平均騰落率が100%(公募価格の2倍)を超えるなど過熱感も加速しています。
IPOにも冬の時代が訪れる
しかし、2006年1月のライブドア・ショックを機に、新興市場の低迷で徐々に初値が公募価格を下回ることも多くなり、投資家のIPO株離れが鮮明になった影響で、IPO株にも冬の時代が訪れます。
しかし、ここ数年でIPO株の人気も復活傾向にあり、2018年4月20日に上場したHEROZ(4382)の騰落率は988.89%(公募価格の10.9倍)と、1997年以降の最高騰落率を記録します。
直近の2020年12月現在では新規上場88社、平均騰落率は105.82%(2.06倍)となっており、IPO株は再び活況を呈しています。
株投資のリスク
株投資のリスクには「株価変動リスク」「流動性リスク」「倒産リスク」の3つのリスクがあります。
1つめの株価変動リスクですが、株は銀行預金とは違い元本が保証されない金融商品です。
企業業績や経済情勢の悪化など様々な要因で株価が変動し、元本を割り込む可能性があります。
2つめの流動性リスクでは、市場に流通する株が極端に少ない場合や、ストップ安・ストップ高等の値幅制限により、希望した価格で取引できない可能性があります。
3つめの倒産リスクは株投資で最も注意が必要なリスクです。
倒産の明確な定義はありませんが、株投資における倒産とは、法的整理等の適用による上場廃止を意味しており、上場廃止が決定すれば株券は無価値になる可能性があります。
株は自己責任で行う
株投資に限らず全ての金融商品では「自己責任」が原則です。仮に損失を被ったならば、それはあなた自身が招いた結果なのです。
「彼を知り己を知れば…」と言いますが、しっかりとリスクと向き合う事が結果としてリスク回避にも繋がります。
株式投資を行う際は3つのリスクを十分に理解し、冷静に周りに左右されず、自分自身の判断で取引を行う事が大切です。
会社が倒産したら
倒産と言う法律用語はないので定義は曖昧ですが、「資金繰りに問題があり、経営活動の継続が出来ない状態」を指して使われます。
銀行取引停止処分になったり、裁判所へ法的整理(会社更生法・民事再生法・破産法・特別清算)の申請を出した時点で倒産と位置付けられると考えられています。
最近の新聞・ニュース等の報道では、経営破綻という表現を用いるのが一般的となっています。
経営破綻は2種類ある
企業の倒産(経営破綻)には再建型と清算型の2種類がありますが、仮に再建の道を歩んだ場合でも100%減資するケースが多く、減資をすれば企業は存続しても従来の株主の権利は無効になります。
投資家にとって、倒産(経営破綻)とは上場廃止を意味しており、上場廃止が決定した株は整理ポストに移され、上場廃止の期間(通常1ヶ月間)まで売買可能ですが、処分売りが殺到することで株価はどんどん下がります。
急落過程に於いて、短期の利鞘を狙う行為により乱高下することもありますが、最終的には1円、2円まで下げるのが一般的です。
ここ数年、減少傾向にあるとはいえ過去20年間(2001~2020)の上場企業倒産件数は174社にもなります。
経営破綻する企業には何かしらの予兆があり、磐石な財務内容、好調な市場環境下での突然の経営破綻は考えられません。
大切な資金を無駄にしないためにも、投資家には倒産リスクの見極めた投資が求められます。
上場廃止で儲かる?
語弊がないよう述べますが、上場廃止とは「証券取引所が上場継続不適と判断し、投資者保護の目的から株式公開取引を終了すること」を言います。
上場廃止=倒産なのではなく、証券取引所が定める上場廃止基準に抵触する事によって決定され、MBOなど株式未公開化による自発的な上場廃止申請も含まれます。
上場廃止の典型例は経営破綻ですが、磐石な財務内容、好調な市場環境下での突然の経営破綻は考え難くいでしょう。
一般的には「慢性的な赤字決算」「債務超過」「時価総額の不足」「売買高の不足」など、上場廃止基準に抵触する目に見える兆候があります。
粉飾決算、虚偽記載、不適当な合併等の予期せぬ事象においても同様です。
上場廃止で儲かった株があった
上場廃止が決定すると株価は値下がりしますが、逆に上場廃止によって値上りする銘柄もあります。
TOB(株式公開買い付け)やMBO(経営陣買収)による事例では、市場価格にプレミアを乗せた価格が提示される場合があります。
1999年に解散決議し上場廃止となった立川の例では、取引最終の130円/株が会社清算により、残余財産分配金202.4円/株となった稀なケースです。
結果的に上場廃止で儲かるケースもありますが、リスクを避ける意味でも予兆のある銘柄には近寄らないようにするのが賢明です。
まとめ
本記事では、株価の決まり方、投資スタンス、株投資のメリット、株のリスクについて解説しました。要約すると以下の通りです。
- 株価とは企業の価値を時価で表したもの
- 投資スタンスは、短期か長期かの投資期間を表したもの
- 株のメリットは元本の何倍にもなる可能性
- 株のリスクには価格変動、流動性、倒産の3つのリスクがある
下の記事【株とは何か?】とあわせて読めば、株の知識はとりあえず充分でしょう。知識ばかり詰め込んでも勝てる訳ではありません。
最近では単元未満ではじめられる少額投資もありますし、バーチャル取引もあります。まずは気楽な気持ちで株に慣れてみましょう。
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