株とは何か?
私たちが株式投資を始める上で最初に感じる疑問です。孫氏の兵法の一節に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあります。
相場には、様々な要因と思惑が絡み合うので、100回戦って100回勝つのは些か現実的ではありませんが、投資で勝つ秘訣は勝率を上げる事にあります。
己を知るは別の機会で述べますが、先ずは敵である「株とは何か?」を理解したうえで、充実した株式投資ライフを送れる前準備をしていきましょう。



本記事の内容
- 株とは何だろう?
- 株の起源を知る
- 日本初の株式会社について
本記事では上記の3つについて解説していますが、これから株式投資を始める初心者でも分かりやすいよう、簡潔明瞭をモットーにまとめてあります。
冒頭で孫氏の「彼を知り…」と紹介しましたが、人は正体の分からないものに恐怖するもので、相手(株)を知らなければ対策も立てれません。
株とは何か?は、相手(株)の正体を知り、対策を立てて実行する、基礎となる最初に知るべきことです。
本記事が、これからあなたが乗り出す株式投資という名の航海の一助になれば幸いです。
それでは本文を見ていきましょう。
そもそも株とは何だろう?

株とは、株式会社が発行する「株券」の事を指します。この株券とは株式会社が資金を集める際に、出資してくれた株主に対して発行する有価証券の事です。
企業は、設備や事業拡大の為に多額の資金を必要とします。そこで「事業が成功したら利益を分配しますよ」と第三者に対して資金を募ります。
その見返りとして出資者に「株主の権利」を与え、出資の証明書である「株券」を発行するのです。
企業サイドから見れば銀行融資と違い出資金には返済義務がなく、資金調達を容易にするメリットがある反面、経営の柔軟さを狭めるリスクも同時に背負います。
巷で「会社は誰のものか?」と議論されることがありますが、資本主義においては会社は経営者や従業員のものでなく、株主のものと位置づけられています。
企業は会社の権利を切り売りする訳ですから、出資者は共同オーナーと捉えることができます。
出資者は共同オーナーになる
共同オーナーたる株主には「経営に参加する権利」や「経済的利益を受ける権利」が与えられます。
経営に参加する権利は「共益権」と呼ばれ、代表的なものに株主総会に参加して議決権を行使できる権利があり、経営の意思決定に関与することができます。
また、経済的利益を受ける権利は「自益権」と呼ばれ、利益の分配である配当を受け取ることができる「利益配当請求権(剰余金配当請求権)」があります。
もちろんメリットだけではなく、株主は倒産等で出資金が戻ってこないリスクも忘れてはいけません。
ですが、倒産等で企業が出資金以上の負債を抱えた場合(債務超過)であっても、有限責任となり株主は出資金以上の損失を被ることはありません。
株主とは?
株主とは、企業に出資した人(株式投資においては株を購入した人)の事で、企業の共同所有者としての権利が与えられます。
株主の権利には、「議決権」「剰余金配当請求権」「残余財産分配請求権」があり、出資割合(保有枚数)に応じて権利を行使する事ができます。
あくまで株式の保有割合に応じた権利行使です。共同所有者だからと言って必ず主張が通る訳ではありません。
例えば、重大な決議決定を行う株主総会決議では、普通決議には出席した株主の議決権の過半数が、特別決議においては3分の2以上の賛成が必要となっています。
利益の配当に関しても、会社法の法規には「必ず配当を出しなさい」いう規定は無く、赤字等で無配となる場合や、企業の判断で内部留保される事があります。
株券の電子化
冒頭で株とは株券であると述べましたが、2009年1月5日に「株券電子化(株式のペーパーレス化)」が実施されました。
株券電子化で、株主の権利は証券保管振替機構(ほふり)及び証券会社等の口座で電子的に管理され、今まで流通していた上場企業の株券は無効になりました。
今までは、株主の権利の実体化こそが株券であり、株券の存在を前提として株主の権利がありました。
株券電子化により上場企業の株券は消滅しますが、形が無くなるだけで株券本来の存在意義に変更はありません。
ですが、紙ベースの上場企業の株券が消滅した現在、「株券」という言葉尻に捉われる事が無いよう、株券が株なのではなく「株主の権利」が株なのだと覚えておきましょう。
株の起源を知ろう

株の起源は非常に古く、出資者から出資金を集め割合に応じて利益を分配する仕組みは大航海時代(15世紀~17世紀前半)に「当座企業」が確立しています。
この方法は航海1回ごとに出資を募り、航海が終了する度に清算・分配する仕組みでしたが、利益の確保や事業の継続性など難点も多くありました。
そこで、恒常的な活動を目的として「株式会社」が誕生したのです。
株式会社の始まりは、1602年にオランダが東インド(インドネシア)に設立した「オランダ東インド会社(略称:VOC)」だと言われています。
オランダ東インド会社は、アジアの香料をヨーロッパに運ぶのが目的で、船の建造や事業の成功に膨大な資金を必要としました。
しかし、時は大航海時代の17世紀ヨーロッパ。航海技術が確立さていないこの時代では、海賊に襲われるリスクや、沈没の危険性もありました。
その為、多くの資産家から出資金を集め、航海が無事成功して利益が出たら、その利益を出資の割合に応じて分配したのです。
なぜ東インド会社が世界初なのか?
株の起源がオランダ東インド会社だと言われる由縁は何でしょう?
それは、世界最古の証券取引所である「アムステルダム取引所」を通じて、出資者に対し出資の証明である有価証券を発行し、自由な売買が可能であったことに他なりません。
また、1555年にロシア交易の資金調達を目的にロンドンの毛織物商らによって設立された「モスクワ会社(モスクワ大公国会社)」は世界初の勅許会社であり、そこから後の株式会社に発展したと言われています。
勅許会社とは、絶対主義時代に植民地における貿易や植民企業の独占を国家から認められた会社のこと。
株の語源について
株の語源は、「切り株」に由来すると言われています。
木を切った後に残っている根元部分を「切り株」と呼びますが、木が無くなっても、しっかりと根を張って残り続けます。
その根元が残る様から、江戸時代には、世襲などで継承され永続する身分や地位を「株」と呼びました。
現代でも大相撲の年寄名跡を「年寄株」と呼び、親方名を襲名する権利として「株」の名が使われています。
また、身分や地位を継承できる権利である「株」は、江戸時代から売買、譲渡の対象であったとされています。
日本初の株式会社は?

1867年に建議書を提出した、小栗上野介の「兵庫商社」は、役員・定款まで備えた株式会社の原型とされています。
1869年には、早矢仕有的が株主と社員によって構成する会社組織を日本で初めて採用した、丸善の前身「丸屋商社」を創業します。
1873年に設立された渋谷栄一が会頭を務める「第一国立銀行」は、出資を一般から公募した事や株式会社の条件をほぼ満たしてる事から、日本初の株式会社と言われています。
1893年に商法に基づき設立された三菱財閥の源流企業である「日本郵船株式会舎」は株式会社の条件を全て満たしており、実質的な日本初の株式会社とする意見もあります。
日本で初めて上場した株式会社
ちなみに日本の上場第1号は、東京証券取引所の前身である東京株式取引所の「東京株式取引所株(通称:東株)」となっています。
東京株式取引所は、東京実業界の有力者であった渋谷栄一ら11名が発起人となり、株式取引所の設立を出願。日本初の公的な証券取引機関として、1878年に設立されました。
日本初の株式会社は3社ある?
兵庫商社
江戸時代末期の幕臣で、勘定奉行などを歴任した小栗上野介が稟議書を出した兵庫商社は、役員・定款まで備えた日本初の株式会社とされる。
第一国立銀行
国立銀行条例に基づいて設立され、渋谷栄一が会頭を務めた第一国立銀行は、出資を一般から公募した日本初の株式会社とされる。
日本郵船株式会舎
岩崎弥太郎を祖とする三菱財閥(三菱グループ)の源流企業。日本郵船株式会舎は、商法に基づいて設立された日本初の株式会社とされる。
渋谷栄一って何者?
上記の日本初の上場企業の一つとされる、第一国立銀行の会頭を務めた渋谷栄一は、その生涯に於いて約500社の設立に関わったと言われています。
近代日本経済の父と称される渋谷栄一は、天保11年(1840)に埼玉県深谷市の農家の家に生まれました。彼の残した功績は計り知れないですが、ここでは割愛させて頂きます。
渋谷栄一の名をご存じなかった人も多いでしょうが、2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公であり、新1万円札の顔として、今、注目を集めている人物です。
まとめ
株式投資に重要なポイントは色々ありますが、初心者が最初にやるべきことは株を知ることです。本記事では、株とは何かを簡潔・明瞭にまとめました。
「投資は怖いもの」という人もいるでしょう。でも、なぜ怖いのかと問われて明確に答えれる人は多くはないでしょう。
人は見えないものに恐怖し、見えない恐怖が不安心理を増幅させるのです。
ですが、恐怖の正体を知ることで恐怖を克服するための戦略が生まれます。
後編となる【株をはじめる】も併せて読めば、第一段階は終了です。焦らずゆっくりとステップアップすればよいのです。
ことわざにもありますが、急がば回れです。ストレッチだと思って、まずは最初にやるべき前準備をしっかりと整えていきましょう。
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株をはじめる~株式投資の初心者が最初に知るべき4つのこと
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